01.23.04:55
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01.14.16:41
2.腕
- [CATEGORY:ハードエロ妄想さんに50のお題 COMMENT:0 TRACKBACK]
2.腕
あやうくゲシュタルト崩壊。だんだん、お椀にみえてきた\(^o^)/
【共通の注意書き】
こっちの裏ページは書きたいシーンだけいきなり始まりいきなり終わるぶつ切りが基本スタンスなのでものすごい短い上に、それ単体では全く救いがない感じなのですが、その後幸せになる感じの望准がベースなのはどれも変わりませんので、そんな感じで念頭においていだければ幸いです。
コンクリートの奈落へと叩きつけ引き寄せる腕。
振り上げた拳を押さえつける腕。
太腿の内側を跡がつくまで押し広げる腕。
剥き出しの肌を這い回る腕。
零れる悲鳴をねじ伏せる腕。
腕、腕、腕、腕、
2.腕。
「……ませんか?ねえ、久藤くん」
先生の穏やかな声が僕の名を呼んだことを認識すると、途端に地獄の釜底から手招きする悪夢のごとき残像が消え去った。一瞬の白昼夢。受け取り損ねた水玉模様のコーヒーカップが膝にかけていた毛布の上に墜落する程度の時間だった。
熱いココアが茶色の染みを広げるのをぼんやりと目にしながらも、先生の声は半分も耳に入ってこない。
丸めたタオルで汚れを拭って忙しなく動く指先、若草色の袖から覗く手首、腕、きちっと釦をとめた襟元。
視線を徐々にあげると、最後には、僕をじっと覗き込む糸色先生の双眸とかち合った。すぅっと笑みの形に細められる瞳が、何か言いたげに揺らめいているのを認めて僕はまた瞼を伏せた。
今は何も聞きたくないし、何も言いたくない。
掴まれた指の跡は、きっと痣になっている。紫色か、赤いのか、あるいは黄色く変色しているのかはわからないが、恐らく酷く醜い物であるに違いない。さらに悪いことは、それは全て先生に見られてしまっているということだった。クッションに背を預けると、ようやく消え去ったと思ったあの残像は呆気なく闇の中から浮かび上がってきた。目を瞑ると、幻聴さえリアルに蘇ってくる。荒々しい罵倒、侮蔑、聞くに堪えない猥雑な野次。圧倒的な現実感を伴って、それ以外何も存在出来なくなる。
手の先がどんどん冷たくなるのを感じ、あの空間に置き去りにされたような気がした。闇からにょきにょきと生える植物のような腕に絡め取られ身動きが取れない。あの暗い部屋で、服を剥ぎ取られる寒気を思い出し体がどうしようもないほど震えた。
「せんせぇ…」
今夜先生の家に来てから初めて溢れた言葉は、自分の声ではないみたいに嗄れていた。助けを呼びたかったわけではない。そこまで僕は弱くもないし、恥知らずでもない。でも、名を叫ばずにはいられなかった。
「もう眠った方が良い。私がずっとそばにいますから、安心して。ね?」
着物越しにきつく抱く先生の腕は暖かく、緊張がゆっくりと弛緩した。
とん、とん、とゆるく背中を撫でる腕のリズムが先生の鼓動と重なるのを聞きながら、僕は肩口に頬を埋めるようにして嗚咽を殺す。
あれだけ苦しめられていた這い回るおぞましい腕の感触は、僅かの焦燥さえも残さずにするすると闇に溶けていった。
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